外国へ旅行するとき、最も実感すべきものがあるとすれば、
「ああ、私はこの国へやってきたのだ」という旅情であろう。
つまり、旅行前にイメージしていたものが、
現実に自分の目に入り、イメージと視覚が一致する、その瞬間である。
インドへ行ったときに感じたそれは、街で人と同等に道を歩き回る牛を見たときであった。
このインドにおける牛が、パリでは何であったか。
それは言わずと知れた、シャンゼリゼをまたぐ凱旋門であり、
凱旋門の南にそびえ立つエッフェル塔であった。